『心療内科医の1日』

―心療内科の診察室は人生の縮図―


 心療内科というと、心の病気の人が来ると思われがちですが、実際には、病気まではいかないけど、社会や家庭での生活で心が傷ついた方が、多く診察に来られます。私は、医者になるまでに数々の職業を経験したので、そんな患者さん(?)の心の叫びが自分のことのように共感できます。
 朝8時半、私が診察室に入ると、すでに10名以上の患者さんが待合室で辛そうな表情で待たれています。
(1番の方~)
―調子はどうですか?
先生、昨夜は一睡もできませんでした。
―なにか嫌なことがありましたか?
職場で自分は正しいのに上司からひどく罵られ、ずっとそのことが気になり朝まで眠れなくて...。
―自分は間違ってないと反論しましたか?
いいえ、言えませんでした。
―じゃあ、聞き流しましたか?
いいえ、心が深く傷つきました。
―どうしたらよかったと思いましたか?
思ったことをきちんと言えばよかったと後悔しています。
(2番の方~)
私は何のために生まれてきたんでしょうか?先生。
―どうしてそう思うようになったんですか?
3日前に些細なことで母親と喧嘩になって「あんたなんか産まなければよかった。」とお母さんに言われて...私は、小さい時から親からの愛情を感じたことがないんです。
―今、お母さんから愛情をうけたいですか?
今までなかった分、償ってほしい。
―でも、あなたには2人の小さい子供がいるでしょう。お子さんに愛情を注いでいますか?
―そんなこと、あまり考えたことがなかったです。
お子さんは母親であるあなたをどう思っているでしょうね?今日から、しっかりと考えてくださいよ。
......................................................................................................
診察室は人生相談室ではありません。だから、アドバイスを与えるよりは質問することの方が多く、その質問によって自分で考えてもらう、自分で気づいてもらうように誘導します。もちろん、日常生活を送れないくらい辛い方には、抗不安薬などの薬を処方します。

(3番の方~)
―どうしました?元気なさそうですねえ。
人が自分をどう思っているか、いつも気になって、心が休まらないんです。
自分がいない、まわりがいて自分がいるみたいな変な緊張感が続いているんです。家に帰ると緊張の糸が切れて涙が出てきます。
―○○さん、目を閉じてみて下さい。耳も塞いでください。
こうですか?(目を閉じて耳を塞ぐ)
―何も見えない、何も聞こえなくなったでしょう!
世界はあなた中心に動いているんですよ。人目が気になったら3秒間、目を閉じて下さい。目を開けるとその人はもういないかもしれませんよ。
(4番の方~)
―薬もかなり減りました。来月から仕事復帰ですが、大丈夫ですか?
また前のように仕事ができるんだろうか、他の人の迷惑になるのではなどと不安で仕方ないんです。先生、この不安感をなくしてください。
―道路を横断するとき不安感が全くなかったら車にひかれるかもしれません。
不安感は人間を危険から守ってくれます。人間に必要な感情なんですよ!最初は、会社の近くまで行って、近くで珈琲でも飲んで帰ってきてください。それが出来たら、職場に行って挨拶だけして帰ってください。職場の上司の方には私からリハビリのためということで了承を得ておきます。
......................................................................................................
言葉で大丈夫と言ってもなかなか納得できませんが、自ら行動することにより、
克服できることは多いのです。これは認知行動療法という治療法です。
注)会話内容は実際の患者さんを特定できないように変えてあります。

みなみストレスカウンセリング広島

『不景気と教育』

転換期にある日本の教育。不景気なのに教育熱は上昇中。

■不景気がもたらしてくれるもの
最近、テレビや新聞などでやたら不況・不景気と煽るので、余計に財布の紐は固くなってしまう一方です。先日、私がコメンテーターとして出演している番組で、100円の服や1000円の勉強机を特集してました。身体の成長の著しい子供にとって、確かに安いのは助かります。しかし、不景気だからこそ、大切なお金を一時的な消費ではなく、たとえば長く使えば使うほど味が出てくるものや一生大切に使えるものの購入にあてたいと思うのは私だけでしょうか?『ものを大切にする』という考え方が身につくなら、不景気で悪いことばかりではないのかも知れません(長期だと困りますが...)。


■教育は想像力の種
不景気で大安売りがよく目に付きますが、教育の大安売りも存在します。信じがたい格安授業料で生徒を募集している塾もあります。授業内容の良し悪しは別として、本当に大丈夫なのかと逆に躊躇される保護者の方もいるのではないでしょうか?
教育は安売りセールの商品ではありません。良質な教育を受けた子供は、先人が築いた知識を元に、論理的思考過程を経て、その柔軟な発想力で新たなものを生み出します。以前、高校2年生に難解な数学の入試問題を解かせていたのですが、こちらが「なーるほど!」と仰天するような解答をする子がいました。早速、受験雑誌に発表しましたが(もちろんこの生徒が解いたという注釈をつけて)反響はなかなかのものでした。
教育は無限に広がる想像力の種なのです。『知識には限界があるが想像力は世界を駆け巡る』これはアインシュタインの名言ですが、我々は子供に良質な種(=良質な教育)を蒔かなければなりません。
 
■ここまで低下した日本の子供の学力
戦後のドン底の不景気から立ち上がるとき、日本は資源が少ない国だからこそ先のことを考えて子供の教育にお金を使いました。私たちが子供の頃は、計算ドリルや漢字ドリル・世界各国の首都などを厳しく勉強させられました。ほとんどの小学生中学生は、知らないことを恥としていました。
しかし、一部の文部官僚の提唱で始まった、間違った「ゆとり教育」は、日本の子供の学力をどんどん低下させていきました。今、中学や高校で取り扱っている学習量は15~20年前の半分だという事実をご存知ですか?
先日、テレビの「街頭でギャルにクイズ」という番組で、18~19歳の女の子に「フランスの首都は?」という質問に、何人もの女の子が「イギリス」と答えていました。恥ずかしいという気持ちは全くないようでした。(こんな番組をみた私自身恥ずかしいと反省してますが...。)
いわゆる「おバカ」が堂々と大手を振ってまかり通る今の日本、いったいこの先どうなっていくのでしょうか?


■回復しつつある子供の学力
間違った『ゆとり教育』の反省から、文部科学省も重い腰を上げ、新指導要領にあるように極端に減った学習量を以前の量に少しずつ戻しています。実際、 最近実施された数カ国参加の学力試験では、日本の子供は結構健闘していたようです。さらに、少子化や不景気にもかかわらず、中高一貫の私立中学の受験者数が過去最高を更新し右肩上がりで増えています。これはネットなどで情報が簡単に入るため、いい学校には志願者が集中するからだそうですが、親の教育に対する姿勢にも変化が現れているといえそうです。
不景気だからこそ、無駄な消費に大切なお金を使うのではなく、将来に実を結ぶ投資として、ネットなどで情報を集め、「良質な教育」にお金を使って下さい。

携帯サイトみなみストレスカウンセリングはこちら

『自分の居場所を失った若者たち』その③

―若者を取り巻く環境と価値観の変化―

■「坂の上の雲」
 今、司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」がNHKでテレビ放映されています。毎回とても感動的で、あっという間に終わってしまいます。明治の頃の若者の希望に満ちた目はぎらぎらと輝いており、おのずと今の若者の生気のない目と比較してしまいます(演技をしているのは今の若者だということも忘れて...)。
 親を大切にし、礼儀正しく、自分の考えに自信を持ち、国のため夢の実現のためにひたすら勉学に励む。明治時代の若者は、限界が見えないからこそ多くの実現可能な夢を持ち、迷うことなく邁進するのでしょう。
 確かに、日本は戦後の荒廃から立ち上がり経済発展を成し遂げましたが、その蓄えはバブルとともに消え、日本人にあった倫理観も知らぬ間になくなっています。でも、今の日本は本当に発展した国なのでしょうか?いまだに日本のいたるところに米軍基地が点在し、アメリカのご機嫌をうかがっている。さらに中国やロシアにも気をつかい、北朝鮮に拉致されても我慢している。牛や羊を平気で食べている人たちに、クジラを食べる日本人は非人道的だと非難され日本の調査捕鯨船に体当たりされても我慢している。
 私のクリニックには職場でストレスを受けた若者が多く来ます。「上司から何度も理不尽なことを言われた。」「残業を無理やりさせられたが残業手当は支給されなかった。」などなど...。結局、職場では何も言えず、ストレスから心の病気になり、診察室で溜まった不平不満を全部私に向けて吐き出します。「なぜ自分の正当性を主張しないのか!」「なぜ自分の考えに自信を持たないのか!」私は何度も心の中でつぶやきます。時には言葉に出して叱ることもあります。

■自分中心に半径3mにしか関心がない若者
 私は機会あるごとに若い人たちに「将来の夢は?」という質問をぶつけます。女性からは「好きな人と結ばれたい」という答えが返ってくることが多く、男性の場合「今の生活を大切にしたい」など、とても『夢』とは言い難いものもあります。自分の身の回りのことにのみ関心があり、他から干渉されたり傷つけられることを嫌います。恋愛至上主義の若者が多く、失恋は人生の最大の試練と断言します。もちろん、大きな夢を持ち、その実現のために頑張っている若者もいますが、決して多数派ではありません。貧乏を意識するのはどんなとき?という質問に対し「携帯電話が使えなくなったとき」と言う若者が多いという調査結果が出たそうですがこれにはびっくりしました。

■潜在する情熱とエネルギー
 今の日本は、明治時代と違い、限界が見え、頑張っても報われることが少ない社会になっているのかもしれません。さらに温暖化で地球環境はどんどん悪くなり、若い人たちが将来に希望を失い刹那的になるのも無理もありません。
 私の予備校のある受験生に「なんでそんなに頑張っているの?将来の夢は?」と問いかけると「とりあえず、大学にはいって選択肢を広げ、いろいろやってみて何をしたいか決める。」という答えが返ってきました。彼は自分の可能性を信じ『夢』を探しているのでしょう。
 今の混沌とした日本で、自分を探し続けている若者は多くいます。本当は若い人たちの心の奥には、明治時代の若者と同じような強い情熱やエネルギーが潜在しているに違いありません。私たちは、彼らがこれらを十分に発揮できような社会を作っていかなければなりません。

『自分の居場所を失った若者たち』その②

―住みにくくなった日本と社会の責任―

 先日、引きこもりの子供を持つ親やその支援者の方を対象に「現場で見た若者~心療内科医からのアドバイス」という演題で講演をしてきました。
 なぜ、引きこもるようになったのか、どうすれば引きこもり状態から脱出できるのか...などを話しましたが、終了後も多くの質問が続き、この問題の根深さを改めて痛感しました。
 また、引きこもりの若者が増えている一方で、マナーが悪く社会人とは思えない若者も増加傾向にあります。


■台湾の若者
 昨年のお正月に家族で台湾に行ってきました。新年を迎えるカウントダウンに台湾一高いビルから何百発もの花火が打ち上げられ、その光景に圧倒され感動しました。しかし、終わったら見物客で交通機関はマヒ、ほとんどの人が大通りをゾロゾロ歩いて帰宅します。私たちも約2時間かけてやっとホテルに戻れたのですが、その帰途、花火よりもっと感動的な光景に遭遇しました。  
 通りを歩いている若者はマナーがよく、誰一人として騒ぐものはいません。電車の中でも同じで、今の日本で見かける光景とは全く違います。『マナーの悪い若者』や『生気のない若者』がいないのです。私は20年前の日本にタイムスリップした錯覚に陥りました。
 あとから聞いた話ですが、台湾では、親や学校の子供に対するシツケ・教育はとても厳しく、また、マナーの悪い若者は、知らない大人からでも注意されます。島国で資源もないからこそ、将来のことを考えて教育に力を入れているのだそうです。
 そう、これは私が子供の頃、学校の先生や親そしてメディアから何度も聞かされたことでした。だからこそ日本は経済大国になり生活も豊かになったのです。


■住みにくくなった日本
「最近、日本はだんだん住みにくくなっているな~」と思っているのは私だけでしょうか?
 無灯火の自転車が車の前を通りすぎ、見れば高校生がくわえタバコで乗っている。コンビニの前では汚い地べたに若者が座って唾を吐きながら大声で話している。身障者用の駐車スペースに金髪の若者が改造車で駐車している。電車の中で女子高生がメイクをしている。一方で、多くの無気力な若者が、パソコンや携帯でしか他人とコミュニケーションを持てないでいる。さらに、今の日本の若者の学力は想像以上に低く、九九を言えない高校生や中学レベルの学力しかない大学生も相当数いるのです。


■ゆとりからの脱却
 なぜ、こんな状況になったのでしょうか?私は約20年以上若者と接していますが、10年前から少しずつ状況が変化してきたように思えます。そう、いわゆる「ゆとり教育」が始まった頃からです。子供を鍛えず、競争させない。学校の先生を無力にして、子供に責任の伴わない自由を与える。その結果、学力がなく、責任感のない、マナーの悪い若者が急増したのではないでしょうか。
 以前、あるテレビのトーク番組で、ゆとり教育を提唱していた元文部官僚が堂々とコメンテイターとして教育論を展開していました。今回、政権が交代し「ゆとり教育」の見直しが行われようとしています。1日でも早く、振子をもとに戻さなければ、日本の国力は、そのうち台湾やシンガポールそして韓国に追い越されてしまかもしれません。若者の学力は何年も前に追い越されてしまいましたが...。

『自分の居場所を失った若者たち』その①

―引きこもりと自傷行為―


■元気な中高年と生気のない20代の若者
先日、岡山大学医学部の4年生に対し、非常勤講師としてメンタルヘルスの講義をしてきました。教壇に立ち、まず「皆さん、こんにちはー!」と第一声。しかし、100人近くいる学生からは元気のない「こんにちはー」という小さい声のみ。半分以上の学生の目に生気はなく、講義中に携帯のメールを打っている学生もいる始末(もちろん思いきり叱りましたが...)。
後で教授から「最近の大学生はあんなもんですよ」と言われ、愕然としました。私の予備校の浪人生の方がはるかに元気があって目が輝いている。
競争をさせない日本の大学は、勉学目的が明確であるはずの医学部の学生でさえ堕落させているのでしょうか。
私は、よくいろいろな講演会に呼ばれますが、中高年対象のメンタル講演会では私の一言一言に反応があり、終了後も質問がやみません。
精神的には中高年の方が20代の若者よりはるかに元気です。


■生きる目的を失った若者
 日本は、高齢化が加速し老人の国になってしまうと懸念されていますが、私は、今の若者の方が心配です。20歳を過ぎて、なんの仕事にもつかず怠惰な生活を送っている若者は相当数に上ると考えられます。
ある21歳の若者が、両親に連れられて当院を受診しました。高校を卒業後、アルバイトを転々、どの仕事も数日と続かず、結局、いわゆる引きこもりとなり家でゴロゴロしているというのです。
―将来の夢とか、してみたいことは?
何もありません。(うつむいたままで目を合わそうとしません)
―今までの人生で楽しかったことは?
何もありません。(この言葉を発するまでに2~3分かかりました)
―毎日、家で何をしているの?
何もしてない。ただボーっとしているだけ。
―退屈でしょう?
外に出て嫌な思いをするよりはいい。
―友達は?遊びに行ったりしないの?
前はいたけど、今はメンドクサイ。(やっと感情を出し始めました)
彼は、親とも会話をすることなく、外出も3日に1度コンビニに買い物に行く程度。何が彼を今のような状況にしたのでしょうか?


■分裂する自分
子供は、思春期をむかえ、親とは違う価値観をもった自分(自我)を意識し始めます。親に守られているという居心地のいい環境から、他人(特に自分と同世代)との関係で自分を保たなければならない環境への変化の過程で、『ついていく自分』と『ついていけない自分』、『まわりに合わせる自分』と『合わせない自分』を意識します。そして、自分が分裂するのではないかという不安を経験し、分裂しないために「ホンネ」と「タテマエ」をうまく使い分け、自分に折り合うようになります。
ところが、この折り合いに失敗してしまうと、『ついていけない自分』と『合わせない自分』が残り、「自分の居場所がない」と思うようになるのです。


■「居場所がない」女子高生
最近、自傷行為をする女子高生が増えています。決して死のうと思っているわけではありません。彼女たちにその理由を聞くと「自分を傷つけないと自分が消えてしまいそう。自分がなくなってしまう。」という答えが返ってきます。
「学校にいても友達の中に入りこめない。家では親は自分の心の中を少しも理解してない。誰にも弱音を吐けない。心が落ち着かない。何かしたくても何もできない。だから自分を傷つけると、痛いけど自分を感じてホッとする。」
彼女たちの悲痛な叫びを理解できるでしょうか?
(注:診察室での会話は一般的なものに変えてあります)

『緊張のない国で、緊張している子供たち』

-草食系の子供が急増!?-
■緊張する必要のないサービス大国-日本
私たちは、世界でも類を見ないサービス過剰国に暮らしています。
タクシーを止めればドアは自動的に開くし(世界で日本だけ)、降りるときには「忘れ物はないですか?」と乗務員(時にテープ)が注意してくれます。
また、JRで新幹線に乗る時、在来線の改札口で駅員さんが「切符の取り忘れにご注意ください」と何度も注意してくれます。
お店に買い物に行けば、「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」と声をかけられ、買うまでずっと付きあってくれます(時には煩わしくなりますが...)。
とあるイタリアンレストランに入ると、まず氷入りの水が出てきます(注文していないのに水を出すのは世界で日本だけ)。注文したものがテーブルに並び、さあ~食べようかと思うと、「お皿が熱いので、お気をつけください。」と注意してくれます。
ある外国の方が、「日本に来て、最初は心地よかったけど、だんだんイライラしてきた。そのくらい自分でできる!子供じゃないんだから...。」とサービス過剰に憤慨していました。
余談ですが、「日本はミッキーマウスの国だ!」と言っていた外国人がいました。「いらっしゃいませ。ご注文は○○でよろしかったでしょうか。」などとミッキーマウスのような耳に残る高い声で、注文が間違ってないか確認してくれるからだそうです。
■子供に過剰なサービスは必要?
日本は本当に住みやすくていい国、夜遅く外を歩いても比較的安全だし、緊張して生活する必要はない...。でも、それは大人にとって楽な環境であって、その生ぬるい環境は子供をダメにしてしまうのではないでしょうか?
子供はまだいろんなことを学習していません。何が危険で、何が危険でないか、そして何を自分の責任のもとにしなければならないかさえ分かっていません。厳しい環境条件の下で、いろいろな辛い経験をしてはじめて生きる術(スベ)を身につけなければならないのに...。
 欧米の家庭では、親がいなくても自立して一人で何でもできるようになるために、たとえ裕福でも子供には厳しく接し、自分のことは自分でやらせるよう教育します。
ところが、日本では、朝遅刻しないように親が起こし、他の生徒や先生とのトラブルもすべて親がかかわり、学校でも例えば授業についていけなくなったら先生が手取り足取り教えるなど、子供のために大人が何でもしてくれます。
こんな、いたれりつくせりの環境では子供はリラックスして緊張感がないだろうと思うと大間違い...。子供はいつもビクビクして緊張しっぱなしなのです。ちょっと友達と言い合いになったり、先生に叱られたりすると、ずっとそのことを気にして不安になり、中には学校に行けなくなる子もいます。なぜなんでしょう?
人間の眉間の奥には、扁桃体という危険センサーがあります。ここがまわりの状況を判断して警告を発して、動悸を起こすなどして(いつでも走って逃げられるようにするため)危険を回避しようとします。
しかし、何でも大人がやってくれる安全な環境で、ほとんど使われることがなくなった子供の危険センサーは、ほんのわずかな刺激でも危険!危険!と警報をならすようになったのではないでしょうか。
最近、草食系のおとなしくてビクビクしている子供が増えていると感じるのは私だけなのでしょうか?

 

うつ病 広島

「アンチエイジング(抗加齢)とストレス」

-ストレスがなければ長生きできる??-


■ストレスが心と身体をむしばむ
厚労省が5年ごとに実施しているアンケート調査で、日本の労働者の約60%がなんらかのストレスを感じているということがわかりました。まさしく、現代の日本社会はストレス社会なのです。
職場での人間関係、家庭環境、受験勉強などストレス源はいくらでもあります。
ストレスは、不安感や抑うつ感そして焦燥感などの心理的変化を引き起こし、倦怠感や動悸そして頭痛などの身体症状を誘発します。
なぜストレスがこんな症状を引き起こすのでしょうか?
脳がストレスを感じると、このストレス情報は自律神経を介して胃や腸などの臓器に伝えられ、生理的変化を起こさせます。さらに、免疫機能も低下させ、分泌されるホルモンにまで大きな影響を与えます。だから、強いストレスを受けると、胃潰瘍ができたり風邪をひきやすくなったりします。最新の研究では、かなり多くの病気の発症がストレスに起因していることもわかってきました。


■アンチエイジング
最近、アンチエイジングという言葉をよく耳にします。どうすれば長生きできるのか...これを医学的に研究する『アンチエイジング学会』というものもあります。今から2200年前、中国の秦の始皇帝が「東の国に不老長寿の薬があるから探して来い」と部下の徐福に命じ、徐福は長い旅の果てに日本にたどり着いたという徐福伝説があります。実際、今や、日本は、世界に冠たる長寿国になっていますが、果たして現在のストレス社会にあって、今後、日本人が長く生きるためには、どうすればいいのでしょうか。


■適度なストレスは免疫機能を高める
ストレスがなければ人は長生きできるかというと、そうではありません。
以前、この連載で書きましたが、漁師さんがナマコを船底の生けすに入れてもって帰る時、そのままにしておくと死んでしまうのに、生けすにナマコの天敵であるカニを1匹入れておくと、ナマコは港に帰ってもイキイキしているそうです。適度なストレスは生体防御機構を高めるために免疫機能を高くさせますが、過度のストレスは免疫機能を低くさせ、生体防御機能を低下させます。
実は、ストレスには、快ストレスと不快ストレスの2種類があるのです。同じストレスでもある人には快ストレスとなり、別の人には不快ストレスになるなど、個人差がありますが、強くて長く続くストレスはだれにとっても不快ストレスには違いありません。例えば、何年も浪人を続けている受験生や家庭内別居でほとんど会話のない夫婦などは、とても強い不快ストレスを受け続け、いずれは心や身体に何らかの障害を生じてくるでしょう。


■腹八分目は長生きの秘訣
最新の研究で、酵母の細胞を実験室で培養するとき、培養中の栄養を少なくすると細胞の分裂回数が増えることがわかりました。さらに、サルやマウスを低栄養下で飼育すると長く生きることも実験で実証されています。以前、テレビ番組で長寿の方にその秘訣をたずねたところ「粗食」とか「腹八分」という答えが返ってきました。
生き物は、栄養条件が悪い状況下では、種を保存するために代謝活動を低下させて長く生命を保つように変化するのです。いわゆる省エネモードになるわけです。
そういえば、比較的やせ型の人(省エネタイプ?)に長寿の人が多いですよね。


 さっそく、今日から快ストレスを享受しながら、腹八分目の食事で長生きしようではありませんか!

Wendy広島-連載-Dr.長井の受験とストレス病

『緊張のない国で、緊張している子供たち』
-草食系の子供が急増!?-
■緊張する必要のないサービス大国-日本
 私たちは、世界でも類を見ないサービス過剰国に暮らしています。
タクシーを止めればドアは自動的に開くし(世界で日本だけ)、降りるときには「忘れ物はないですか?」と乗務員(時にテープ)が注意してくれます。
 また、JRで新幹線に乗る時、在来線の改札口で駅員さんが「切符の取り忘れにご注意ください」と何度も注意してくれます。
 お店に買い物に行けば、「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」と声をかけられ、買うまでずっと付きあってくれます(時には煩わしくなりますが...)。
 とあるイタリアンレストランに入ると、まず氷入りの水が出てきます(注文していないのに水を出すのは世界で日本だけ)。注文したものがテーブルに並び、さあ~食べようかと思うと、「お皿が熱いので、お気をつけください。」と注意してくれます。
 ある外国の方が、「日本に来て、最初は心地よかったけど、だんだんイライラしてきた。そのくらい自分でできる!子供じゃないんだから...。」とサービス過剰に憤慨していました。
 余談ですが、「日本はミッキーマウスの国だ!」と言っていた外国人がいました。「いらっしゃいませ。ご注文は○○でよろしかったでしょうか。」などとミッキーマウスのような耳に残る高い声で、注文が間違ってないか確認してくれるからだそうです。


■子供に過剰なサービスは必要?
 日本は本当に住みやすくていい国、夜遅く外を歩いても比較的安全だし、緊張して生活する必要はない...。でも、それは大人にとって楽な環境であって、その生ぬるい環境は子供をダメにしてしまうのではないでしょうか?
 子供はまだいろんなことを学習していません。何が危険で、何が危険でないか、そして何を自分の責任のもとにしなければならないかさえ分かっていません。厳しい環境条件の下で、いろいろな辛い経験をしてはじめて生きる術(スベ)を身につけなければならないのに...。
 欧米の家庭では、親がいなくても自立して一人で何でもできるようになるために、たとえ裕福でも子供には厳しく接し、自分のことは自分でやらせるよう教育します。
 ところが、日本では、朝遅刻しないように親が起こし、他の生徒や先生とのトラブルもすべて親がかかわり、学校でも例えば授業についていけなくなったら先生が手取り足取り教えるなど、子供のために大人が何でもしてくれます。
 こんな、いたれりつくせりの環境では子供はリラックスして緊張感がないだろうと思うと大間違い...。子供はいつもビクビクして緊張しっぱなしなのです。ちょっと友達と言い合いになったり、先生に叱られたりすると、ずっとそのことを気にして不安になり、中には学校に行けなくなる子もいます。なぜなんでしょう?
 人間の眉間の奥には、扁桃体という危険センサーがあります。ここがまわりの状況を判断して警告を発して、動悸を起こすなどして(いつでも走って逃げられるようにするため)危険を回避しようとします。
 しかし、何でも大人がやってくれる安全な環境で、ほとんど使われることがなくなった子供の危険センサーは、ほんのわずかな刺激でも危険!危険!と警報をならすようになったのではないでしょうか。
最近、草食系のおとなしくてビクビクしている子供が増えていると感じるのは私だけなのでしょうか?

私のクリニックに来院される多くの方が、うつ症状を訴えられますが、うつ症状があるからと言って「うつ病」とは限りません。イヤなことがあれば誰でも落ち込みます。でも、ある程度時間がたてば立ち直るし、楽しいことがイヤなことを浄化してくれます。
実際、うつ症状で来院された方で「うつ病」と診断したのは約2割程度です。他の方は、他の疾患でうつ症状を呈してたり、頭の中をマイナス思考でいっぱいにしていき詰まっているだけだったり...。
ある患者さんが、「先生、私、最近マイナス思考しかできなくて...。プラス思考した覚えがないんです。ハア~(ため息)」と言われました。
―「もし、この後、宝くじを買い1億円当たったら何に使いますか?貯金はだめですョ。」
「先生、当たらないですよ!」
―「だから、仮定の話ですよ。可能性はなくはないでしょ!」
「えーっと、車買います。」
―「それだけでは1億円使いきれないでしょう。」
「じゃあ、海外旅行に行って、あっ豪華客船に乗って世界中旅したい!」
―「○○さん、今、思い切りプラス思考してるじゃないですか!」

 去年の4月から、広島テレビ『旬感テレビ派』にレギュラーコメンテーターとして出演しています。最初の頃は適度な緊張感で楽しくやっていましたが、今年の4月から番組の内容が一部変わり、だんだん意欲がなくなっています。さらに、テレビに出ることによって顔を覚えられ、知らない人にじーっと見つめられたり、指さされたり、声をかけられたり...。とてもいい人を演じなければならないという緊張感で疲れます。いいことなんて全然ありません。  
そんな悩みをRCCラジオ『本名のゴゴイチ』の本名さんにぶつけたら(私の愚痴を聞いてくれる人は数少ないんです)、「長井先生、テレビに出させてもらってるんだから贅沢言っちゃだめですよ!」と叱られました。ほんと、どこからも声がかからなくなったら寂しくなるんでしょうね。
 RCCラジオの本名のゴゴイチにも月1回程度出させてもらっているんですが、この前、番組中に私の携帯電話が鳴りだして(スイッチを切り忘れていました)、本名さん、その節はお世話になりました。本名さんは、服装はTシャツなど地味で、いつも自転車で移動していて、ほんとにストイックでいい人です。それに比べ、ほんとの私はそれほどいい人ではないんです。時に、自分の中に棲む邪悪な存在を感じているこの頃です。