―心療内科の診察室は人生の縮図―
心療内科というと、心の病気の人が来ると思われがちですが、実際には、病気まではいかないけど、社会や家庭での生活で心が傷ついた方が、多く診察に来られます。私は、医者になるまでに数々の職業を経験したので、そんな患者さん(?)の心の叫びが自分のことのように共感できます。
朝8時半、私が診察室に入ると、すでに10名以上の患者さんが待合室で辛そうな表情で待たれています。
(1番の方~)
―調子はどうですか?
先生、昨夜は一睡もできませんでした。
―なにか嫌なことがありましたか?
職場で自分は正しいのに上司からひどく罵られ、ずっとそのことが気になり朝まで眠れなくて...。
―自分は間違ってないと反論しましたか?
いいえ、言えませんでした。
―じゃあ、聞き流しましたか?
いいえ、心が深く傷つきました。
―どうしたらよかったと思いましたか?
思ったことをきちんと言えばよかったと後悔しています。
(2番の方~)
私は何のために生まれてきたんでしょうか?先生。
―どうしてそう思うようになったんですか?
3日前に些細なことで母親と喧嘩になって「あんたなんか産まなければよかった。」とお母さんに言われて...私は、小さい時から親からの愛情を感じたことがないんです。
―今、お母さんから愛情をうけたいですか?
今までなかった分、償ってほしい。
―でも、あなたには2人の小さい子供がいるでしょう。お子さんに愛情を注いでいますか?
―そんなこと、あまり考えたことがなかったです。
お子さんは母親であるあなたをどう思っているでしょうね?今日から、しっかりと考えてくださいよ。
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診察室は人生相談室ではありません。だから、アドバイスを与えるよりは質問することの方が多く、その質問によって自分で考えてもらう、自分で気づいてもらうように誘導します。もちろん、日常生活を送れないくらい辛い方には、抗不安薬などの薬を処方します。
(3番の方~)
―どうしました?元気なさそうですねえ。
人が自分をどう思っているか、いつも気になって、心が休まらないんです。
自分がいない、まわりがいて自分がいるみたいな変な緊張感が続いているんです。家に帰ると緊張の糸が切れて涙が出てきます。
―○○さん、目を閉じてみて下さい。耳も塞いでください。
こうですか?(目を閉じて耳を塞ぐ)
―何も見えない、何も聞こえなくなったでしょう!
世界はあなた中心に動いているんですよ。人目が気になったら3秒間、目を閉じて下さい。目を開けるとその人はもういないかもしれませんよ。
(4番の方~)
―薬もかなり減りました。来月から仕事復帰ですが、大丈夫ですか?
また前のように仕事ができるんだろうか、他の人の迷惑になるのではなどと不安で仕方ないんです。先生、この不安感をなくしてください。
―道路を横断するとき不安感が全くなかったら車にひかれるかもしれません。
不安感は人間を危険から守ってくれます。人間に必要な感情なんですよ!最初は、会社の近くまで行って、近くで珈琲でも飲んで帰ってきてください。それが出来たら、職場に行って挨拶だけして帰ってください。職場の上司の方には私からリハビリのためということで了承を得ておきます。
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言葉で大丈夫と言ってもなかなか納得できませんが、自ら行動することにより、
克服できることは多いのです。これは認知行動療法という治療法です。
注)会話内容は実際の患者さんを特定できないように変えてあります。

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